聴きどころ・こぼれ話

今回の曲順は全曲を演奏するピアニスト北村朋幹さんの提案です♫

後半のプログラムは、イザイが独奏楽器の組み合わせを探求した、2台のヴァイオリン(友情)、チェロ(瞑想曲)、そしてヴァイオリンとチェロの二重奏(ポエムノクターン)といった後期の3つの作品をピアノ伴奏で順次取り上げます。なかでも2台のヴァイオリン(友情)は、Marie Cornazさんによると、1914年演奏旅行中にロシアで亡くなった「芸術作品の共演者」、フランス人ピアニストのラウル・プーニョに捧げたオマージュです♫

1歳年上のプーニョ(1852~1914)はフランス奏法の巨匠であり、ショパンの高弟ジョルジュ・マティアスの弟子、卓越した演奏解釈で歴史に残るピアニスト、彼が校訂したショパン原典版の数々が出版されています。世界で初めて録音によって成功を収めたピアニストの一人であり 素晴らしいパール奏法の録音が残っています。またオペラ座の芸術監督も務めた人です。

イザイはショパンのワルツやノクターンそしてバラード1番などヴァイオリン用に編曲を残していますので、プーニョから影響を受けたと見られます。そんなに多くないイザイの写真のなかには、プーニョとの数々が目を引きます。

毛利文香さん、山根一仁さん、北村朋幹さんによる『友情 Amitié op.26』楽しみです。



演奏曲順が決まりました♪


聴きどころ【イザイの2番目の詩曲】

10月7日のプログラム冊子に、イザイの研究家として名高いベルギー王立図書館音楽部門 MarieCornazさんによる<イザイの詩曲>解説をいただいております。2番の詩曲op.13「Scène au rouet」「Au rouet」について、引用します。************

MarieCornazさんより

7つの詩曲のうちの最初の作品である「ポエム・エレジアク(悲しみの詩曲)Poème élégiaque op.12」は1892年ヴァイオリンとピアノ用として完成、フォーレに献呈され1893年に出版されました。同時に「ヴァイオリンとオーケストラの為の協奏的詩曲 Poème concertant 」に取り組み、イザイの弟子でありミューズであったベルギーのヴァイオリニスト イルマ・セテIrma Sètheに捧げるつもりでしたが、妻ルイーズLouise Bourdauと深刻な夫婦間の対立があり、未発表のまま残されてしまいました。1894年「糸車の情景 Scène au rouet op.13」第2番目となる詩曲(新作となる作品)を妻に献呈しました。

ゲーテの「ファースト」のマルゲリータの紡ぎ車の場面に由来する(糸を紡ぐグレートフェン)ヒロインが愛する人の帰還を願うシーンを連想させる、シューベルトの歌曲として有名です。スコアの完成に数年を要した作品となりました。

最終的には「糸車の情景 Scène au rouet op.13」を改訂し、「糸車を手にして Au rouet op.13」を2番目の詩曲として、1913年ベルギーの弟子マウド・デルスタンシュMaud Delstancheに献呈。

10月7日チラシは「Scène au rouet」と表記しておりますが、「Au rouet」の版で、 山根一仁 北村朋幹が演奏いたします。

シューベルトの「糸を紡ぐグレートフェン(マルゲリータの愛称)」にインスパイアされたイザイの「糸車を手にして」を聴き比べてみませんか


イザイの詩曲💚構成要素 

イザイの詩曲の終わり方は、全曲静けさへとフェードアウトします。曲の終わりを告げる、私たちが聞き慣れた強い終止感(完全終止)とは違う、静まり返った終結に独特の雰囲気が漂います。詩曲の冒頭は、霧に覆われたような、あやふやな印象で始まり、しばし憂いを含んだ優しさや一種の恥じらいに包まれ、音楽に溢れ出します。よどみなくすらすらと流れる旋律は魅力的です。次第にイザイの情熱的な本質が現れてきて、轟き、膨らみ、加速し、高まり、響き渡り情熱的な叫びとして爆発します。やがて静けさが戻り、激しい怒りは深い安らぎに置き換わっていきます。****************************

イザイの作品(チェロ2曲とオペラをのぞいて)はヴァイオリンのためにあり、イザイの技術的な能力は「音楽」の為に捧げられています。ヴァイオリンの重要性やその技術への深い理解を少しも軽視することはなく、彼は生徒たちに完成された技術を求め、「技術だけが、演奏家が演奏する作品の解釈に全身全霊を捧げられる唯一のものだ」と述べていたそうです🎻🥰

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イザイの4番目の詩曲 Extase Op,21 陶酔 10月7日は#毛利文香さんと#北村朋幹さんが演奏します♪

オイストラフの演奏をYoutubeでお楽しみください。



イザイの3番目の詩曲💚聴きどころ  冬の歌 Chant d'hiver op.15

イザイとショーソンのコラボにおいて、ショーソンはヴァイオリン文学の美しい作品「詩曲op.25」を生み出し、イザイが各地で演奏して世に知らしめたことは音楽史に残る話ですが、世間にはあまり知られていませんね。

イザイとショーソンの絆が生んだ音楽として、ショーソンがイザイに献呈した"Concertコンセール" や"詩曲op.25" これまでのコンサートで取り上げてきました。詩曲op.25を作曲した3年後1899年に自転車事故で急逝したショーソンの死を悼み、イザイはPoème-3と副題を付けChant d'hiver, 冬の歌 op.15」を1901年に作曲、1901年5月18日にロンドン・クイーンズ・ホール(Queen'sHall)で弟のThéoYsaÿeと初演しています。

ショーソンの詩曲と同様に協奏曲形式とし、追悼の意を込めた作品です。ショーソンへのオマージュとして描かれたこの曲には、すべては悲しみに満ちて、すべては嘆きに包まれたような深い情感があり、最後の7小節で心停止していくような光景が浮かびます。皆様にはいかがでしょうか。

イザイの3番目の詩曲「冬の歌op.15」は、来る10月7日にイザイの詩曲を特集するコンサートで、ヴァイオリンをヴィオラ(Vla.田原綾子&Pf.北村朋幹)に置きかえて演奏いたします。


ヴァイオリンとオーケストラの演奏↓をお楽しみください。

https://www.youtube.com/watch?v=u4-J3LPSTAo&list=RDu4-J3LPSTAo&start_radio=1

1902年春にロンドンとパリで同時に出版された管弦楽譜のエピグラフに、リエージュの詩人ジョゼフ・ヴリンツのワロン語詩『Sov'nance d'Hiviér』(冬の思い出)から選んだ5つの詩句を刻ませました。(MarieCornazさんより画像提供)


【戦争・戦争・戦争】

今も民間人を巻き込むおぞましい侵略や戦闘が続いています。1914年、ウジェーヌ・イザイ(1858-1931)の3人の息子、ガブリエルGabriel (1887-1961)、アントワーヌAntoine(1894-1979)、そして16歳未満だった!テオThéodore(1898~1934) はベルギー軍に志願しました。

ウジェーヌ・イザイはクノック(Knokke-Heist)に滞在していましたがドイツ軍の進撃により、彼はフランスに避難せざるを得なくなり、フランスに避難し、そこからロンドンへ移りました。

イギリス上陸時、彼の全財産はヴァイオリンだけだった、、と。ロンドンで歓迎を受けた彼は、ヴィルトゥオーソとして、そして指揮者としてイギリスに避難したベルギー人難民のために演奏したそうです。(写真:ベルギー王立図書館音楽部門提供)

テオ&アントワーヌと
テオ&アントワーヌと
1916年クノックで
1916年クノックで
1917年ロンドンで
1917年ロンドンで

写真:ベルギー王立図書館音楽部門

【独学の人】

作曲を独学したウジェーヌ・イザイ、父親の方針で(義務教育ではなかった)小学校にすら通っていなかった。知的で洗練された作品を、並外れた理解力で解釈したウジェーヌ・イザイ、一体どのようにして読み書きの初歩を学んだのか?

成人したときには、非の打ちどころのないフランス語を流暢に話し、母国語だけでなく英語とドイツ語でも立派に文章を書き、イタリア語とロシア語も堪能だった。彼は本や辞書、文法書を持って旅をしながら学んだ。

ジャン=ジャック・ルソーJean-Jacques Rousseau、ジュリアス・シーザーGaius Iulius Caesarのような古典の読書は、彼の衝動的な性格を和らげ、彼の精神、彼の芸術にうたがいようのない影響を与えた。このロマンティックなヴィルトゥオーソは、純粋な古典主義の深い素養を秘めていた! 一方バルザックHonoré de Balzacの作品に向き合い、優しさ、力強さ、情熱、激しい人生、独自の民族性を構築するワロンの精神をイザイは最も愛した。

作曲家イザイの最後となった作品は、ワロン地方の旋律ややリズムが取り入れられたワロン語の歌劇「坑夫ピエール」。

「 あなたがたは、私が私たちの古い言葉の鋭さ、皮肉、そして明るさをどれだけ愛し、大切にしているか知っているでしょう。その言葉は、良い古いワインのように心を明るくするのです!」ウジェーヌ・イザイ


写真:ベルギー王立図書館音楽部門


【イザイの詩曲】って?

10月7日のコンサートでお聞きいただく、副題に詩曲Poème  と付けた7つ詩曲の他に、副題にPoèmeと付けていないが、Harmonies du soir(ボードレールに捧げた)他の作品もあります。これら詩曲の作曲において、イザイは常に自分自身であり続け、最も深い音楽的個性 を明らかにしています。ウジェーヌ・イザイはデビュー以来、独学した作曲を最も貴重な拠り所として、内面の秘密の鏡として捉えてきた人物です。

イザイの詩曲について語るイザイのコメントが残っています。

「一般的に、詩曲の形式は私を常に惹きつけてきました。それは感情表現に優れ、協奏曲の伝統的な形式が課す制約から解放されています。ドラマティックで抒情的であり、本質的にロマンティックで印象派的。涙を流し、歌い、影となり光となり、変化するプリズムのような存在です。自由であり、作曲家を導くのはそのタイトルだけで、文学的な枠組みなしに感情や抽象的なイメージを描き出すことができます。一言で言えば、モデルなしに描かれた絵画です。

『詩曲Poème ポエム』 は、私の音楽的表現における進歩であると考えます。これは私にとって、試行錯誤の過程における決定的な段階を画する作品であり、音楽的な興味と真の技巧の偉大さとの融合を追求する執念の表れです。

真のヴィルトゥオジティは、あまりにも軽視されています。 繰り返し言及しますが、 ヴァイオリンの巨匠たち以来、 勇気のない奏者たちが作曲をためらうようになり、スキルや秘技を知らない人たちに役割を委ねてしまったからです。」



 (extrait de José Quitin, Eugène Ysaÿeジョゼ・キティン『ウジェーヌ・イザイ』より抜粋:1926年12月にリエージュで行われたイザイの講演のテキストより。ベルギー王立図書館音楽部門Marie Cornaz 提供




【聴きどころ】 2025年5月5日

「ヴァイオリニスト/作曲家」だったパガニーニ(1782~1840)やヴュータン(1820~1881)、ヴィエニャフスキ(1835~1880)、クライスラー(1875~1962)らとは異なり、イザイ(1858~1931)は、「作曲家/ヴァイオリニスト/指揮者」として活動したのが独特です。ヴァイオリンやチェロ(若い頃に学んだ)の無伴奏作品だけでなく、ヴァイオリンやチェロをソロにしてオーケストラとの協奏的な作品を数々残しています。

これらの作品は、ロマンティシズムが見事に表現され、楽器の特性を生かした巧みなソロパートと、精妙で緻密な管弦楽パートの間の見事なバランス感覚には、指揮者としての素質が反映されており、作曲家と演奏家と指揮活動の高度な融合による所産だと称されています。音楽家としてのアイデンティティにおいて極めて独創的であったことが伺い知れます。


【Amitié 友情 op.26】10月7日のコンサートでは、Vl.毛利文香、Vl.山根一仁 Pf.北村朋幹による演奏となります。

ベルギーに於いてCD化されている2台ヴァイオリンとオーケストラ版を聴いてみましょう。我を忘れてうっとりと聞きほれてしまう曲ですね~  https://www.youtube.com/watch?v=9j1Z5URWSYM





【こぼれ話Vol.9】

ここでは【イザイの詩曲 】にまつわる話が主ですが、大こぼれ話として【イザイの無伴奏チェロソナタop.28】について触れたいと思います。

と言いますのは、音高3年生でチェロを専攻されている長屋亞矢乃さんから思いがけなくも資料提供のご希望があり、イザイを演奏したいという熱い思いに接し、心動かされました。若い息吹を感じたこの瞬間にイザイの無伴奏チェロ作品について、ここで共有できたら素晴らしいのでは!...と思ったわけです。

【イザイの無伴奏チェロソナタop.28 / EUGÈNE YSAŸE  Sonata pour violoncelle seul opus 28 】 

https://www.youtube.com/watch?v=9j1Z5URWSYM 



出典はベルギー王立図書館音楽部門Marie Cornaz著書「À la redécouverte d'Eugène Ysaye」

ベルギーのチェリスト モーリス・ダンボワに献呈、作曲年1923年6月30日ブリュッセルで完成、1924年に出版、1925年12月29日モーリス・ダンボワによる初演がラーケン宮殿(ベルギー国王およびベルギー王室の公邸)で行われました。

Maurice Dambois(1889~1969)

モーリス・ダンボワはベルギーのチェリスト(写真上)

イザイは無伴奏チェロ・ソナタ(作品28)を彼に献呈し、ヨーゼフ・ジョンゲンもヴァイオリンとチェロのためのソナタ(アルフレッド・デュボワに献呈)を彼に同時に献呈しています。

さぞかし腕利きで素晴らしい芸術家だったのでしょうね。小曲の演奏が残っていますので「スラブの子守歌」「柳」しみじみとした曲を聴いてみましょう~♪


Laeken(Palais royal)

100年前(1925年)に初演されたベルギーの王宮(画像上)です。

是非、皆様の宮殿でイザイの無伴奏チェロソナタop.28を聴いてみてください。


Grave重々しく荘重に- Intermezzo間奏曲- In modo di recitativo朗読風に- Finale con brio終盤を情熱的に(活気をもって)

【E.イザイの無伴奏チェロソナタハ短調とJ.S.バッハの無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調】

私たち日本イザイ協会は、2017年にイザイとバッハ5番、2つの無伴奏チェロ曲「ハ短調」にスポットを当て、コンサートを開きました。イザイを伊藤悠貴さん、バッハを向山佳絵子さんに演奏いただき、少し専門的にはなりましたが、プログラムノートに作曲家小森俊明さんによる執筆(写真下)があります。

参考になれば幸いです。








【こぼれ話 vol.8】

「糸車を手にして op.13 」1901年にウジェーヌ・イザイ作曲、1909年11月3日にロンドンのQueen'sHallでYsaÿe とC.keithが初演。ピアノ伴奏の反復するリズムやメロディにのせて歌うシューベルトの「糸を紡ぐグレードヒェンGretchen am Spinnrade」の高揚感にインスパイアされたのかもしれませんね。

2024年9月12日コンサートの記録録音よりヴァイオリニスト山根一仁ピアニスト北村朋幹演奏の一部をお楽しみください。10月7日コンサー山根一仁さんの演奏曲 糸車の情景op.13、友情op.26、ポエム・ノクターンop.29 

繊細な音色を楽しめるホールのホワイエには庭園が隣接、爽やかな秋風に吹かれてお過ごしいただけます。皆様のお越しをお待ち申し上げます♪

イザイの自筆譜「Scène au rouet -糸車の情景」には手書きの表紙画が付き、右上にはA ma Femme(妻に捧げる)とありますから、これは特別な表紙なのでしょう。アール・ヌーボー様式で描かれた葡萄柄、葉っぱの細かい線、文字の装飾が印象的です。




【こぼれ話vol.7】

【空想旅行案内人】ジャン=ミッシェル・フォロン(Jean-MichelFolon )は1934年ブリュッセル生まれ、フォロンは多岐にわたる多彩な才能が世界各国で高く評価された20世紀後半のベルギーを代表するアーティストです。1970年の大阪万博に初来日したフォロン、今回は没後20年、フォロン財団創立25周年の2025年に、日本で30年ぶりとなる大回顧展が開催されています。

2025年10月7日から日本・ベルギー友好160周年を迎える2026年にかけて、【イザイの詩曲】を特集するコンサート他を計画しています。これまで無かった特別なプロジェクトに、フォロンのビジュアル(チラシ👇)を使用させていただける事になり、大変光栄に思っています。イザイとフォロンのベルギー文化のエッセンスを日本の皆様にご紹介する素晴らしい機会となるよう、一所懸命準備を進めております。どうぞよろしくお願いいたします。

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❓(;^ω^)❓

楽器と奏者が一体となった存在感、弓を持つ手は白く細く繊細でとても印象的。でも弦が6本ありますね~弓で弾くギター演奏は聴いたことがありません。 フォロンのメッセージを思い巡らせています♥皆さまの発想をお聞きできたら嬉しいです。いかがでしょう? 

フォロン財団のホームページ https://fondationfolon.be/ 


【こぼれ話vol.6】



ピアニスト北村朋幹さん受賞おめでとうございます♥

私たちのコンサート【イザイとフォーレ】に続く【イザイの詩曲】のプログラム全演奏を支える最も大切な存在です。

【イザイとフォーレ】を終えた後、次なる【イザイの詩曲】への北村さんのコメントより

「糸車と"ポエム・エレジアク"に初めて取り組む中でこのジャンルに大変強い興味を持ちまして、実はあのあと、個人的な興味から、他の詩曲の楽譜を集めたり、資料を読んだりしていたところでした。」

https://www.kajimotomusic.com/news/2025-03-03/


【こぼれ話vol.5】


ヴァイオリニスト毛利文香自身のYouTubeチャンネル公開初めての演奏動画はイザイの無伴奏ヴァイオリンソナタ4番です。

毛利文香さん「イザイの詩曲」での演奏曲は

Extase Poème -4 陶酔op.15   Amitiè Poème- 5友情op.26

エリザベート王妃国際コンクールでも入賞した毛利文香さん

ヴァイオリニストとして、ウジェーヌイザイはとても大事にしている作曲家だそうです。



【こぼれ話vol.3】

ヴァイオリンとオーケストラの為に作曲した最初の詩曲Poème élégiaqueポエム・エレジアク(悲しみの詩曲)op.12、この曲はロミオとジュリエットの悲劇的な戯曲をイメージしたものです。

イザイの故郷ベルギーでの留学生活を終えたばかりのチェリスト上野通明さんは、『儚さと仄暗く光る秘めた情熱を同時に持つ彼の音楽を自然と身近に感じていました。イザイの持つ不思議な魅力を、より強く感じる様になった事もあり、1人でも多くの皆様に素晴らしい作品の数々をきいていただけたらと思います!と前向きな思いをコメントしてくれました。 ポエム・エレジアクチェロ編曲版は2019年にロシアの名チェリストアレキサンドル・クニャーゼフ氏と協力し合い初刊行した版です。ヴァイオリン曲ではイザイは暗い表情を出すために敢えて本来とは違う、G線を1音下げて調弦をするスコルダトゥーラを指定しています。もしかしたらチェロの音色のほうがヴァイオリンよりこの曲に合っているかもしれない~チェロ編曲版での演奏は至難の技のようですが、宜しければ挑戦してみてください。

ロマンティシズムみなぎる『イザイの詩曲』の全曲特集するコンサートはこれまでにありません。お聴き逃しなく💛



【こぼれ話Vol.2】

文学(詩)、音楽、絵画がインスピレーションを受け合い、目に見えない内面、苦悩や不安、運命、空想といった精神世界 を描き出そうとしたのが象徴主義の特徴でした。象徴派といわれる芸術家たちは神話、文学(詩)、絵画から着想を得た数々の作品を残しています。イザイもそれらのイメージを音楽にした一人でした。抽象的で奥深く重い感じに思われがちですが、聴いていると、曲に秘められた熱い思いや詩に表わされるような美しい情景が身にしみわたってきて、素直に心を重ねられるところが最も魅力を感じるところです。

<Ne jamais rien faire qui n'ait pour but et moyens, l\'émotion, lapoésie, le coeur. Eugène Ysaÿe 情・詩・心なくして何事もなし得ることはない。>これはウジェーヌ・イザイが残した言葉ですが、ヴァイオリンの技法を極めたイザイが求めていたのは、情・詩・心 だったのですね~。

学習者に向けてこんな言葉も残しています「現代の技巧的ヴァイオリニストでヴァイオリンを歌わせるように弾く人はほとんどいません。かれらは曲の難しさにはわりと楽に対応できるのですが、その技巧の効果が露骨すぎるのです。たしかに聴衆は驚嘆することもあるかもしれない。しかし魅惑されることがないのです。指の敏捷性、自信ある演奏、完璧な運弓、これらはたしかに重要です。しかし同時に、自分自身が欲しているリズムや自分が表したい詩的な表現を伴わせつつ、演奏を展開していくことも最高のレベルでできないといけません。」

象徴派を代表するといわれる人の名言より

画家ギュスタヴ・モロー(1826~1898)「見えないもの、感じるものだけを信じる」

詩人ヴェルレーヌ(1844~1896)は「何よりもまず音楽を」




こぼれ話Vol.1】

 <弦楽器のための詩曲>

ウジェーヌ・イザイ(1858~1931)が独自に取り組んだジャンルです。「イザイの詩曲」は単一楽章で形式的な制約もない約15分前後の作品たちです。詩曲には、副題にPoèmeと付けた7曲と付いていないロマンティックな詩曲Les neiges d'antan(往年の雪)、 Harmonies du soir  夕べのハーモニー)があります。イザイは若い時から詩(テキスト)を書き、そのいくつかに曲を付けていたそうです。『イザイはベルリンで詩人ジュール・ラフォルグを通じて詩に出会い、詩を読むことをやめませんでした。ボードレール、ラマルティーヌ、シュリー・プリュドムの詩を評価し、ワロン(ベルギー国土の南半分の地域)の詩も愛しました。』

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同じく象徴派でフランスの詩人ポール・ヴェルレーヌ(1844~  1896)ほど音楽的な詩を書いている人は少ない、ボードレールの影響を受け音楽性豊かな詩風で独自の境地を拓いた詩人と云われています。 

聞くところによると、イザイとドビュッシー((1862~1916)達は、彼の詩集の新刊がでるときくやいなや本屋(パリ)に駆け込んでいたらしいですが、どんなに詩Poème の魅力に惹き込まれていたかが伺い知れますよね。 ドビュッシーの人気曲『月の光』ヴェルレーヌの詩集『艶なる宴 Fetes Gallantes』から 月の光を取り上げ、イメージを音楽にしています。どんな詩だったのでしょう?

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Clair de lune : Verlaine 


  Votre ame est un paysage choisi
  Que vont charmant masques et bergamasques
  Jouant du luth et dansant et quasi
  Tristes sous leurs deguisements fantasques.
  Tout en chantant sur le mode mineur
  L'amour vainqueur et la vie opportune,
  Ils n'ont pas l'air de croire a leur bonheur
  Et leur chanson se mele au clair de lune,
  Au calme clair de lune triste et beau,
  Qui fait rever les oiseaux dans les arbres
  Et sangloter d'extase les jets d'eau,

  Les grands jets d'eau sveltes parmi les marbres. 

月の光:ヴェルレーヌ

君の心の風景は独創的な絵のようだ

  魅惑の仮装行列が行進し
  縦笛を吹き踊る人が描かれているが
  仮面の下には悲しそうな表情がある
  短調の調べに乗せて
  愛や命を歌っているが
  幸福そうな顔には見えない
  歌声は月の光に溶け込むばかりだ
  静かな月の光は悲しくも美しい
  小鳥たちは木の枝に夢み
  噴水は恍惚にむせび泣く
  大理石の像の中の繊細な水のほとばしり

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ヴェ



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